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18・麹の役割日本酒造りは酵母によるアルコール発酵を利用して進められるわけですが、日本酒の主原料である白米の中には澱粉や蛋白質などが、水に溶解し難い高分子物質の状態で含まれていて、そのままでは酵母の作用を受けることが出来ません。そこで蒸気でこの白米に熱を加えることで水に溶けない澱粉を溶けやすいα化澱粉に変化させ、そこに麹菌を増殖させて、分泌されるいろいろな酵素の作用によって白米の澱粉や蛋白質を酵母の利用しやすいブドウ糖やアミノ酸に変えてやるのです。つまり麹の酵素力によってはじめて酵母が利用できる栄養源が生み出されるのであり、この麹が分泌する各種酵素の力価(作用する力)や分泌バランスによって酵母の活動が大きく左右されます。このことから麹が日本酒造りの設計図的存在であることがわかります。・麹の酵素日本酒は一麹、二酛(もと)、三造りと言われるように、『米こうじの善し悪し』は酒質に大変影響し、製造工程の中でも一番注意してあたる作業と言えます。ここでは単に「米こうじ」と言っても、米こうじ製造担当者(主に杜氏と麹や)は製造する酒の種類によって、数多くの「種麹」を使い分け、繊細な日本酒の香り・味わいを生み出しています。酵素とは生物である麹菌が生産する物質であり、蛋白質の一種であります。麹菌がなぜこのような酵素を分泌するのかと言えば、それは麹菌自体が増殖するのに必要なエネルギーを生み出す為に(麹菌も澱粉のままではエネルギーとして利用できないので酵素を出してブドウ糖に変化させている)行っているのであって、酒造りにおける酵母菌の増殖活動の為に分泌しているわけではありません。私たち人間はこの麹菌の活動を酒造りに利用しているだけなのです。日本酒に使用される【米こうじ】の品質について

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